ドイツの哲学者ニーチェ(1844-1900)が1884年5月に、当時滞在していたヴェネツィアからヴィーン在住の友人パーネト(Paneth Josef 1857-1890)博士に宛てた自筆書簡である。パーネトはニーチェの著作を通じた彼の信奉者であり、1883年12月にはじめてニーチェと会見した。その後ニーチェは完成したばかりの『ツァラトゥストラはかく語りき』第3部をパーネトに贈呈し、書簡はそのさいに添えられたものである。書面には、「私の作品には時間がかかります。・・・五十年後にはおそらく数人の人に(あるいは一人--それには一種の天才が必要でしょうから)、私が果たしたことを見る目が開かれるでしょう・・・」とある。