東北帝国大学学報　第239号

[内容]詔書捧読式：本月十日午前九時より本学講堂に於て国民精神作興に関する詔書捧読式を挙行し別項の如き総長の訓辞あり/総長訓辞：顧みますれば今より拾六年前、大正十二年九月一日に関東地方を襲いました大震災は、幾万の人命と幾十億の資財とを犠牲にし、その復興は容易ならぬ大事業であったのであります。しかも当時は、第一次欧州大戦の影響を受けた経済界の好況に伴って、国民の間に浮華放縦の風習漸く萌し、思想的には軽佻詭激の風が生じて、国家の前途洵に憂うべきものがあったのであります。そこで、畏れ多くも大正天皇におかせられましては、かかる社会風潮に深く御宸襟を悩まし給い、国民精神作興に関する詔書を下し賜うて、「今に及ひて時弊を革めすむは或いは前緒を失墜せんことを恐る　況や今次の災禍甚だ大にして文化の紹復国力の振興は皆国民の精神に待つおや」と諭し給うたのであります。本日詔書御渙発の日に当り、国家興隆の本を一に国民精神の剛健に置かせられました詔書を拝読し、現下の時局の困難なることに思いを致しますとき、この時難の克服が一に懸って国民精神の振作更張にあることを、今更乍ら痛切に感ぜざるを得ないのであります。日支事変以来三年目の秋を迎へ、陛下の御稜威と忠勇なる皇軍将士の奮闘によりまして、歴史上稀に見る戦果を大陸の野に収めたのでありますが、しかしこれを以て泰平の時代が近きにありとするならば、今次事変の重大意義を、未だ自覚せざるものと云わねばなりませぬ。支那を共産化及び殖民地化より解放し、東亜諸国を連ねて眞に道義的基礎に立つ自主的連帯の新しき組織を、即ち所謂東亜新秩序を建設するという我国に課せられたる任務を思うとき、かかる光輝あるしかも困難な課題が、十年二十年の短期間に、所期の成果を上げることを期待し得るわけはありませぬ。我々は一方に於て、かかる課題がいかなる意義をもち、いかなる困難を内に蔵し、いかなる犠牲を求め、いかなる用意を必要とするかについて、透徹した認識をもつと共に、かかる認識を単なる懸声に終らしめないためには、これを日常生活の一々の実践に於て錬成し、迫力あるものたらしめねばならぬのであります。我々の日々の学問的研究や行住座臥の隅々に迄、かかる気魄や心構へが滲み出づるとき、はじめて新しき歴史の建設に耐え得る剛健なる国民といわれ得るのであります。新しき東亜の建設は、同時に我々の生活の建設であり　国民精神の振作でなければならぬことを、「国民精神作興に関する詔書」を拝読致しますにつけて、今更ながら痛感する次第であります。一言所感を述べて訓辞と致します。　昭和十四年十一月十日　総長/勲章伝達式：本月二十二日総長室に於て左記名に対し頭書勲章の伝達式を挙行せり/愛知奨学費記念賞授与式：本月二十二日午前十一時より総長室に於て愛知奨学費記念賞授与式を挙行せり　受賞者左の如し/学位授与：本月中学位を授与せるもの左の如し/来学者：十一月六日　軍事参議官永野海軍大将来学、青山教授の説明にて金属材料研究所を視察せらる　十一月十三日　満州国濱江省訪日商工視察団々長史□明氏外十数名来学、金属材料研究所及附属電気通信研究所を見学せり　十一月二十五日　満州国中堅指導者日本現地研究旅行団二十五名来学、理学部、金属材料研究所及附属電気通信研究所を見学せり/本月中帰朝者：教育事情視察のため満州国及中華民国へ出張中の石原謙教授は十一月四日帰朝せり/本月中応召者：理学部巡視　菅原豊　金研小使　佐藤二郎/九月中召集解除者：医学部副手　新井幹朗/十月中召集解除者：医院雇　木村長平/本月中召集解除者：金研職工　柳田外次郎/戦病死：八月十五日　医院副手　梅沢穣/本月中刊行図書：一、法学　第八巻第十一号　一、生態学研究　第五巻第三号　一、文化　第六巻第十一号　一、理科報告　第四輯第十四巻第四号/令旨捧読式挙行：本月十四日結核予防に関し賜はりたる皇后陛下の御令旨捧読式を医学部に於ては同講堂にて職員学生生徒に対し附属医院に於ては看護婦養成所に於て夫々挙行せり/レントゲン技術見習採用：本月二十四日応募者十五名に対し所定の試験を行い五名を採用せり/昭和十四年十一月分患者数調（入院）　一日平均調　昭和十四年十一月分患者数調（外来）　一日平均調

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